世の中に星の数ほどあるTS系エフェクター。
様々なエフェクターブランドが「TS系」と呼ばれる機種をラインナップに加えています。
これらの「TS系」は本家TSとどのような差があるのか。
その辺を整理するためには、本家TSがどのようなサウンドなのか、ハッキリと認識する必要があります。
2018年5月1日に行われた、エフェクターブック主催のイベント「TS総会」に参加してきました。
※当記事はTS総会直後に書きましたが、有料イベントだったこともあり、1年間寝かせた後に下総さんへご相談の上で公開としました。
さて、告知後すぐに申し込んだところ、返信のメールには次のようなお誘いが。
「もしヴィンテージTS持ってるなら持ってきてー」
→うーん、持ってない・・・流石にFull-Drive2やLandgraff DODは反則だろうし。
総会当日。会場は目黒kahoo。
開演前は試奏会してました。■出演
司会 : 下総淳哉さん(The EFFECTOR BOOK編集長)解説 : 細川雄一郎さん(エフェクター写真館)
試奏 : 井戸沼尚也さん(元室長)
■第1部 -TS講座-
まずは歴史と歴代機種について細川さんからのレクチャー。井戸沼さんの試奏を交えながら。
- OD-850から始まるIbanezと日伸音波製作所の関係性
- 回路構成の簡単な解説、機種ごとの差異
「オペアンプを差し替えだけではビンテージに近づけない、他の要素も大切」
「当時のオフィシャルな回路図の写真がコレなんですが・・・コレはIbanezマニアのドイツ人から・・」
「回路的にはあまり変わらないのに、(TS-808より)TS9の方が明るい音」
個体によってバイパス音が違うというのが面白かったです。
その後細川さんの紹介でスペシャルゲスト。TSの開発者である田村進氏と生テレフォン。MAXONで田村氏が開発したエフェクターの数々の説明、MAXONとIbanezの関係性等々。
田村氏
「それ以前はエフェクター単体で歪みを作り出すモノばかりだったが、真空管アンプとの相乗効果で心地よいドライブサウンド出すことがコンセプトだった」
「周波数特性だけではなく、コンプレッション特性が大切」
「BOSSのOD-1は特に意識していなかった。両者は90年代以降に再評価されたように思う」
その後会場で募った、参加者から田村氏への質問が、シンプルでありながら非常に重要な一面を切り取ってくれました。
質問
- 現在ヴィンテージと呼ばれている個体は、発売当時と同じ音なのか。それとも経年劣化により変化した結果なのか
- 基本的には発売当時の音と大きく変わっていない
- DRIVEのPOTの個体差が一番影響大きい
- オペアンプで音が変わるのは分かるが、大きな影響では無い
この辺の話しを聞けたのが素晴らしいことでしたし、これだけでもTS総会大成功だと思います。
が、ここからが長かった(笑)
■第2部 -王者への挑戦-
エフェクターブック側で設定した暫定チャンピオン「TS-808」を上回るTSはあるのか!?
来場者が持ち寄ったTSと暫定チャンピオンとのタイマン勝負!
ジャッジは会場全員での多数決(なのでユルユル 笑)
暫定チャンピオンのサウンドは確かに凄い。
ミドルのジュワ〜ンという芳醇さ、ローは引き締まって5弦6弦が非常に美味しくブリっとしている、ハイは倍音たっぷりなまま抑えられて耳が痛くない。コードを弾いても音が塊にならずに各弦がハッキリと聞き取れる。うん、分かりやすくイイ音。
対決した個体は以下の通り
- TS-9 (1st Reissue)
- OD-808 (Vintage Serial108***)
- OD-808 (Vintage JRC4558D)
- OD-808 (Vintage Malaysian Chip)
- TS10
- TS9 (2nd Reissue)
- ST-9
- TS10 (The Effector Book select)
- OD9 (TS-808 mod)
- TS5
- BJFE - Little Gold Wonder
正統派から始まり、ヴィンテージあり、モディファイあり、他流試合ありの、非常に良く出来たラインナップでした。その場で募集したとは思えないくらいに。
流石に2番3番4番のヴィンテージ物はどれも非常にいい音で、「どっちが勝ちでもいい」レベル。
ちなみに3番と4番の個体は同一所有者の方で、他にもヴィンテージを持ち込んでいたり、「これまで何台くらい買いました?」→「多分100台以上・・」の発言で会場騒然。ガチだ、ガチの人が来てる!その中から厳選した2台、物凄く良かったです。
ここに登場したどの個体もTSの名を冠するだけあり大まかな音の傾向は似ていて、暫定チャンピオンとの比較だから差異が分かった訳で、それ単体で聞いたらTS5ですら「これはこれで悪くないよね」という、TSの良さを体感出来るセッションでした。これだけの機種を立て続けに比較できたというのも、貴重な体験だったと思います。
最後に登場したBJFEのLittle Gold Wonder、いわゆるTS系ですが、これは明確にサウンドの傾向が違いました。まずゲイン量が大きいこと。次に低音域がかなり出ていること。チューブスクリーマーは中音域をプッシュしつつも高音域・低音域を削って音を整理している感じがありますが、BJFEは削るはずの低音域が出ている。なるほど、確かにモダンなロックサウンドにはこちらの方が合うのかもしれません。
■第3部 -ブラインドテスト-
最後は参加者全員で行うブラインドテスト。
最初にお題となる2台の機種名を提示、ルーパーにセットしたフレーズをそれぞれで流し、2択でどちらなのかを当てるという、非常にシンプルなテスト。ハズした人は脱落し、最後の一人が優勝者。
ここまで2時間半以上、延々TSのサウンドを聞いている訳ですから、こんなもん簡単だろうと、そう思っていた時期もありました。。。
出題されたブラインドテストは以下の通り。
- TS10 & TS5
- TS-808 & TS9
- TS9 & JHS - BONSAI(TS9 mode)
- OD-808 & TS-808
- TS-808 & TS5
TSは全て当時物で、Reissueや現行品は無し。TS-808は暫定チャンピオン。
これ、出題は井戸沼さんのアドリブだと思いますが・・鬼がいた。目黒で鬼を見た。
1問目2問目は分かります、そういう出題は。
なんなの?この3問目!
今まで出てきていないBONSAIが突如登場。しかもサウンドそっくり。
5問目、暫定チャンピオンとゴキブリ。このブラインドテストが示唆するものは非常に大きいです。これ、最終問題なんですね。ここまで当て続けた耳の良い人達がハズしてる訳です。ここまで3時間以上のイベントで疲れていたこともあるかもしれませんが、それ以上にTS5が意外と有能だとも考えることが出来ます。奥が深いな。
ちなみに私の結果 = 第1問からハズす。
おかしいな・・
第1問の最初の出音がそれまでより明らかにコモッたサウンドだったように感じました。
ってことは安っぽいTS5だろうと予想。うん、間違えた。
おそらくそう感じた原因はギター直ではなくルーパーだったからだと思います。
うん、そう思いたい。
■感想
非常に楽しく、非常に有意義なイベントでした。
そうか、これがチューブスクリーマーなのか。今まで以上にTSの魅力に引き込まれてしまいそうです。
また、会場に用意されていたギターとアンプも素晴らしいモノだったように思います。
今回分かったこと。
- 田村進さんはお酒が強い
- TSサウンド、スゲー
- TS5、意外とイイぞ
現場からは以上です。
この東京でのTS総会及び2週間後の「TUBE SCREAMER MEETING TS総会 in大阪サウンドメッセ2018」の後、チャンピオンTSを田村進氏が解析、細川さんのCULT PEDAL SHOPから「TS808 1980 #1 Cloning mod.」としてリリースされることになります。
https://www.cult-pedals.com/products/ts808-1-cloning-mod
この東京でのTS総会及び2週間後の「TUBE SCREAMER MEETING TS総会 in大阪サウンドメッセ2018」の後、チャンピオンTSを田村進氏が解析、細川さんのCULT PEDAL SHOPから「TS808 1980 #1 Cloning mod.」としてリリースされることになります。
https://www.cult-pedals.com/products/ts808-1-cloning-mod
0 件のコメント:
コメントを投稿