2017年8月28日月曜日

Landgraff DynamicOverDrive #1930

私が最初に入手したLandgraff DODです。


欲しいなーと思っていたところに、ヤフオクで難あり品が格安で出品されていました。
フットスイッチを踏んでもエフェクトがかからないことがあると。
スイッチ不良か接触不良なら、自分で直してしまえばいいかと、気軽に落札。

確かにエフェクトがかからないことがあったので、フットスイッチだけフジソク製に交換。それでもNGなのでどこかで接触不良起こしてる様子です。
エフェクトオフのサウンドとも違う、こもった歪み無しのサウンド。クリッピングを切り替えても回復しないことからも、恐らく帰還回路あたりの接触不良かもしれませんね。裏ブタ外したまま使うと問題無い事が分かったので、外したままエフェクトボードに組み込んでいました。

その後、初期型Landgraff DODを購入したのでエフェクトボードのスタメンから外そうかと思ったんですが、調べてみたところ普通のLandgraff DODではない、むしろ特殊な仕様であることが分かりました。



まずは写真をご覧ください。




はい、ここで「あれっ?このカラーリングは!?」と思った方、あなた相当なエフェクターバカですね?おぉ、同好の士よ!
あなたが感じた違和感は半分正解です。正解発表までお付き合い下さい。

塗装はいつものマーブル。ただ、模様がハッキリしてます。

さて、サイドの写真。






マーブル模様がサイドまで続いています。Landgraffの塗装はトップ面だけの場合が多いので、この時点でちょいレア。
そう言えば、Landgraffのステッカー、貼ってませんね。


続いて裏ブタの写真。




書いてある内容自体は普通です。
個人的な話しですが、仙台在住の人間にとって、震災直前に作られた個体というのは、ちょっと感慨深いです。
販売店はBlues Angel Music。Landgraff設立当初からのメインの販売店ですね。


で、この裏ブタ、ここまでマーブル塗装がされているのは結構珍しいです。通常この裏ブタは単一色でまとめられています。この違いに気付いたことから、この個体が普通では無いと感じ始めました。


続きまして、フタを開けてみましょう。






ぱっと見、普通のLandgraff DODです。
なので、入手してからずっと何も気にせずに使っていました。


実はこの裏ブタの中書きを読むと、通常のLandgraff DODとは異なる内容があります。

1つ目は、ペインター。
通常のLandgraffであれば、塗装しているのがArlonPrince氏というのは当然な話です。もしブティックエフェクター検定試験があったら、初級編の最初の方に出てくるくらい、基本的な話です。

ですが、この個体、ペインターの箇所を見ると


DARREN JOHANSEN

ん?? いつものあのお方ではありません。

ヨハンセン氏、ネットで検索してみると、作品やご本人のFacebookがヒットします。
マーブル塗装専門家のようです。
エフェクターの塗装よりも、ギターの塗装の方が多くヒットします。しかもIBANEZのRG・JEM系!
あっ、この人、スティーブ・ヴァイのギターとか塗装してる有名ペインターじゃないか!!

このヨハンセン氏、Facebookでの現住所がPensacola,Florida。
Landgraffや販売店であるBlues Angel Musicと同じ都市です。凄いですね、コミュニティがあっという間に繋がっていく。


この様に、ペインターが違う個体はあまり見かけません。以前触れたマルハチBLOGさんに掲載されてる個体もヨハンセン氏のペイント。なかなかのレアものです。
ペインターが違うなら、サイドや裏面までマーブル塗装だったのも頷けます。
マスキングをキチンとしていたであろう、非常に丁寧な仕事ぶりが伺えます。



さて、裏ブタの中書きには、もう1つ、通常とは異なる箇所があります。
それはシリアルナンバーの直前に書かれています。

DYNAMIC OVERDRIVE (GOLDEN GOOSE VOICE)


なんだこれ。
初期型を買うためにネットでいろんな個体を見ましたが、こんな文言見たことがないです。

ところが、ネットで検索をかけると、次のサイトに行き当たります。長文ですが、一通り読んでいただくと、この後の話が面白くなります。

 
GEAR OTAKUさんの和訳のおかげですごく読みやすい!
GEAR OTAKUさんの記事は他のサイトと異なる視点のニュースが多いので、非常に面白いです。英語が不得手な人間にとって、こういう和訳は助かりますね。)


この文章を書いたのはClay Jones氏と言われています。ある意味伝説のエフェクタービルダーですね。

この文章の中で、Clay Jones氏はJohn Landgraff氏を「金の卵を産むガチョウ」と評します。原文では「Goose who's eggs were golden」と。
どうやら、裏ブタの中書きに書かれた一文は、ここから取られた様です。


さて、今度はこの個体のパーツを見て行きます。






オペアンプはOPA2134PA
トランジスタはBC546


ん? 何かがオカシイ。
そもそもLandgraff DODはチューブスクリーマーのモデファイを基本としていて、

オペアンプはJRC4558D
トランジスタは2SC1815(BL)

というのが通常のはず、むしろそれしか見たことがない。

なんだコレ??
中古品だし、前のオーナーが交換したのかな?ソケット使ってるから交換簡単だし。。


 
このオペアンプとトランジスタの組み合わせって、他にどんなエフェクターで使われてるのかな?と検索をかけてみたところで、全ての謎が解ける、驚愕的な事実にたどり着きます。



そのエフェクターの名前は


 
Clay Jones OverDrive



そう、例の長文を書いた当人であり、長文の中にも出てくる、「50台だけ作って止めた」という、あの伝説的なブツです。



えっ?? 、、、、、 ちょっと待って。
つまりこういうことなのか。



今、目の前にあるLandgraff DODは、
Landgraff夫妻が作成したClay Jonesスタイルの特別な個体



あぁ、だからGOLDEN GOOSE VOICEという記載なのか!

あっ、そう言えば黄色と黒のマーブル塗装ってClay Jones Overdriveの代表的なカラーリングじゃないか!そこまで意識した個体なのか!

よく見ると、クリッピング用のLEDも、普通は3.5mmサイズを使っているはずなのに、Clay Jones Overdriveでも使用されている5mmサイズを使ってるし!



なんだか凄いことになってきました。
なんなんだ?この個体。



更に話しを進めます。

まず、この個体が作られたのは2011年2月22日。
例の長文はいつ書かれたのでしょうか?

いくつかのサイトを確認したところ、オリジナルの文章は削除されている模様。
そして、もっとも掲載日が古いのはFreeStompBoxesというサイトで、2007年の様です。エフェクターを自作する方々にはお馴染みのサイトですね。
このサイトはエフェクターマニアが集う掲示板で、あのエフェクターの回路図はこうだ!とか、こういう改造をするとこんなサウンドに!とか、そういう話をエフェクターマニアや自作マニア、さらには実際のエフェクターブランドオーナーなんかがワイワイ話し合ってます。

このサイトのブティックエフェクターのカテゴリに、例の長文がロックされた状態で掲載されています。
ざっと読みましたが、コメントを残している人々の中にはClay Jones氏本人と思われる人やBob Burt氏本人も登場しています。
 

例の長文、2007年かそれより前にオリジナルが掲載された様ですね。それならこの2011年に作られた個体にGOLDEN GOOSE VOICEという表記がされても不思議ではないですね。

 

他に気になる点がもう1つありまして、非常に細かい違和感なんですけど、電池を内蔵するために貼られているクッション、フットスイッチ側には何も保護がないのがLandgraffの通常スタイルです。
しかし、この個体に関しては、フェルト生地の様なものが滑り止めとしてフットスイッチに貼られていました。


※フットスイッチ交換前の画像


3PDTスイッチ自体、通常Landgraffで使用されている青いスイッチではなく、JASON製スイッチが使用されていました。
シリアルナンバーが近い他の個体では、通常の青いスイッチが使われているのに。


この違和感から、もしかしてJohn&Roselyn Landgraff夫妻以外のビルダーが作ったのか?とも思えてきますが、さすがにそこまでは無いだろうと思っています。基板のパーツの配置や空中配線が通常通りですし。

※もしかしたら、前所有者の方が修理しようとして交換し、通常のスイッチより小型なJASONを使ったので電池を固定するためにフェルトを貼ったのかもしれません。


先ほど書いた通り、オペアンプとトランジスタは交換可能なので、販売時点では通常通りの仕様で、その後の所有者が交換した可能性はあります。この辺は販売店であるBlues Angel Musicに問い合わせてみないことには分かりません。
ただ、通常通りのオペアンプ・トランジスタを使って、カラーリングだけを真似たからと言って、それだけでGOLDEN GOOSE VOICEとは書かない様な気もしますよね。LEDが5mmというのも合わせて考えると、やはり最初から特別仕様として作られた様に思えます。


なぜこの仕様を作ったんでしょうね。
例の長文だとClay Jones氏側はJohn Landgraff氏をあまり快く思っていない様にも感じますが、John Landgraff氏側ではどう思っていたんでしょう。
嫌いだったり敵意があったら、こういう仕様を作らない様な気がします。同業者?友人?ライバル?技術者としての敬意?どうだったんでしょうね。

単純に、「こういう仕様で作ってくれってオーダーがあったから作った」とか、簡単な話しがオチのような気もします(笑)

 
 


あ、そういえば、購入時の箱、何か違いはあるでしょうか。
 
まずは外観



あ、既にGOLDEN GOOSE VOICEの記載が!
これは気付かなかった。
いや、むしろ複数台所有して比較しないと気付けないかも。
更に、同封されている書類。
右上にご注目。



書かれていたんですね。一切読んでいませんでした。。

LEDではない、1N916によるダイオードクリッピング側も、ASYM=非対称だと。これは珍しい。
 



 

以上、Landgraff DynamicOverdrive #1930の解説でした。


裏ブタを開けただけで、こんなにストーリーが展開するとは!
まるで神話の中に紛れ込んだかのようでドキドキします。
とか言ってると、Clay Jones氏に「お前もブティックエフェクターなんて幻想に毒されてるバカヤローだな!アレは日本人が作った回路じゃないか!」とドヤされそうです。


皆さんのエフェクターも開けてみてください。なにかがあるかもしれません。

1 件のコメント:

  1. 本機と同じカラーリングのLandgraff Blues Boxがエフェクターレンタルでお馴染みのSessionさんに置いてあります。
    https://session.world/marketplace/rentals/blues-box-landgraff

    作成年度が違ったり、裏面のサインのカラーリングが違ったりはするんですが、筐体だけ見ると兄弟機みたいでGoodですね!

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